飛ぶように駆けてゆけ

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「絢香、車停めて来るから。先にここで降りて待ってな。」  父がマンションのエントランス横に車を停めてくれた。私は松葉杖を抱えて助手席から降りる。車はマンションの駐車場へと去っていった。  松葉杖がないととても歩けないような今の姿を、彼に見られたくない。  そんな風に思っている時に限ってばったり出くわしてしまう私は本当に間が悪いと思う。 「・・アッコ?」  マンションの入り口の方から私を呼ぶ彼の声。  幼稚園の時から変わらないその呼び方、恥ずかしいな。部活が終わって家に帰ってからも、努力家の彼はジャージに着替えて夜な夜な近所のグラウンドへ走りに行くんだった。欠かさずイアホンを耳に着けて。
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