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「・・・ゴッちゃん?」
私も舌っ足らずだった子供の頃の呼び方で応じた。顔を上げるといつもの黒いジャージの彼と目が合う。いつだったか、彼は夜の練習に向かう際に飲酒運転の車にぶつけられて大怪我をしたことがある。それ以来、彼はジャージの二の腕に蛍光のランマーカーを巻いていた。
そういえば私も彼も怪我との戦いだったなと、戦友のような親近感が湧く。
二年前、ずっと帰宅部だった彼が高校で陸上を始めると聞いた日も、今日みたいに雨が降ってた。その時に比べると筋肉で体が一回り以上大きくなったように見える。
二年間、私はずっと彼を見てた。負けないように。追い越されないように。彼に失望されないように。
けれど、私は結局最後まで戦えずに退場してしまった。
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