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堤防に着くと強い突風が吹いた。 と同時に由紀子(ゆきこ)ちゃんにあげた麦わら帽子が宙を舞う! 「いやっ!! 」 時折、ウネリで大きく荒れる海、由紀子ちゃんがおぼれている様子が見えた! わたしが堤防に登ろうとしたとき、誰かが勢いよく堤防に駆け上り海に飛び込んだ! 「誰? 」 後ろで自転車が風に煽られて倒れる! 直哉(なおや)君!? 由紀子ちゃんのところに泳いでいくのは確かに直哉君だった! ウネリからの返しが由紀子ちゃんを沖合に連れて行こうとする。 もう少し! もう少し!! 由紀子ちゃんをつかむと岸に向かって泳ごうとしている。 あの時と同じだ!! まるで悠馬君を助けに行った莉子(りこ)と同じだった。 「そうだ! 」 あの時と同じなら、今度こそ! わたしは持ってきた浮き袋をひと扇ぎし、瞬時に空気を溜めた! そして海に飛び込んだ。 直哉君!! 由紀子ちゃん! 絶対に助けるんだから!! 上から見るのとは違い、海は複雑に波立っている。 なかなか前に進まない。 なんで!!! でも、今度は絶対に浮き袋を手渡すんだ! 手渡すんだ!! 夢中で伸ばしたわたしの腕を誰かが強くひっぱった。 「智夏(ちなつ)!! 智夏!! 」 「直哉君! 」 「智夏、戻るぞ! 俺につかまれ」 浮き袋を由紀子ちゃんの体に固定をする。 大きく泣きわめいて暴れる由紀子ちゃん。 「由紀! ほら、かえるさんだ。これ持ってれば大丈夫だぞ。かえるは水なんてへっちゃらなんだ!! 安心しろ!! 」 直哉君は腰に付けていた『かえるのピクルス』を由紀子ちゃんに手渡した。 由紀子ちゃんは徐々に落ち着きを取り戻した。 「よし、良い子だ!! 絶対にお前らを連れて戻るから安心しろ。 俺は水難救助隊だ! 」 直哉君はわたしと由紀子ちゃんを力強く引っ張っていく。 「好きだよ」 「なんだ? 」 その時、うねりが大きな波をつくりわたしたちを飲み込んだ!! 水がぶつかる音とともに自分の体が水中に押し込まれる。 直哉君!! どこ? いったいどこにいるの? 直哉君!! どこ? わたしは大きく手を伸ばし、指先に当たったものを力いっぱいつかんだ!! 「智夏!! 来てくれたんだ! 」 「え? ええ??  莉子!! 」 わたしの顔の目の前にいるのは莉子だ。 そして浮き袋を持って海の上にいた。 「智夏、これ! 悠馬君に! 浮き袋つけるよ! 」 ここは.. ここは悠馬君を助けようとした海だ。 「ほら、しっかりして!! 智夏!! 私につかまって!! 」 莉子がわたしと悠馬君をひっぱる。 しかし、うねりが絡まるようにじゃまをする。 「絶対に、絶対に戻るんだから!! 」 莉子が叫ぶ! これは、あの状況と同じだ! ダメだ!! きっと大きな波が来る!! 波に飲まれちゃう!! 海が力を貯めこんでいるのを感じる。 その時、山から一陣の風が吹くと、あたり一面、時が止まったように静かになった。 海が静まりウネリさえもおさまっていく。 「あっちだ!! おおい! 大丈夫かあ! 今、助けるぞ! 」 わたしたちに気が付いた漁船が近づいてきた。
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