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『かえるのピクルス』をもらった。
夏休み、わたしは友達の莉子を連れ沼津西浦にある叔母の家に泊まりに行った。
だいたい2週間くらいかな。
沼津駅まで叔父さんに迎えに来てもらい、淡島の海沿いを車が走ると、その静かで真っ青な海に莉子のテンションはMAX! まるで小学生のように目を輝かせていた。
「ねぇ、智夏! 『るるるサンライズビーチ』だって。あそこ行こうよ! ねぇ! 」
「はい、はい、まずは家に着いてからでしょ」
「智夏ちゃん、あとでそこまで送ってあげようかね? 」
「ああ、叔父さん、わたし達に気を使わないでください。泊まるだけでもご迷惑なのに」
「ははは。そんなの気にすることないさ。いっぱい遊んで行ってよ」
「ほらほら、智夏ちゃん。おじさんの言葉に甘えようよ」
耳元で怪しくささやく莉子。
「 ..はぁ、まったく.... 」
わたしは叔母さんに小さいころから可愛がられていて、わたしも叔母さんが大好き。
小さな頃からちょくちょく家に泊まりに行ってはみかん畑を手伝ったりしていた。
仕事が終わった後に、みかんを贅沢に絞った特製みかんジュースを一気飲みするのがたまらないのだ!
「智夏、ほら! みかん畑だよ。なんか作り物みたいで可愛い! 」
「知ってるよ」
みかん畑のあぜ道を通り家に着く。
「じゃ、智夏ちゃん。俺はちょっと農協行かなきゃいけないから」
「ありがとう叔父さん」
「どうもありがとうございました」
私はカバンを肩に、莉子は大きなコロコロを荷台から降ろす。
「ほら! 智夏、農家の道具がいっぱい。機械もあるよ」
「あたりまえじゃない。農家なんだから」
「もー....いつもに増して塩対応だなぁ。塩分控えめにしないと身体に悪いよ」
「はいはい、くだらないこと言っていないで、早く家に入るよ」
「ごめんください。おばさーん! 」
「やぁ、やっとついたね。時間かかったね」
奥から叔母さんがにこにこしながら出迎えてくれた。
「うん。ちょっと『トラブル』あって。あ、こっち、わたしの友達の— 」
「沢田莉子です!! お世話になります! 」
「はは。莉子ちゃんは元気だね。好きなだけ泊まっていっていいからね」
『トラブル』とは例のごとく莉子の『ドジっ子』発動したのだ。
——まだ旅の始まりとも言えない笹塚駅
なんとベンチに財布をいれたポシェットを忘れたというのだから呆れた口がふさがらない。
重いキャリーバッグに気を取られてしまったと言うのだ....
新宿駅に着くと、顔面蒼白で近くの駅員さんに泣きついた。
ポシェットは運よく笹塚駅で保管してくれていて、笹塚駅まで戻ると、旅は一度仕切り直しとなったのだ——
「まぁ、まぁ、そんなに機嫌悪くしないで。これも旅の醍醐味じゃない」
「そんな醍醐味きいたことないよ」
「じゃ、これあげるから。かえるのピクルス、黄色バージョン。『黄色君、黄色君! 指令言い渡す! 君はこれから智夏のもとにで暮らして、彼女を護衛するのだ! 』 ね!? 」
「おお。ありがと! 」
「莉子のは緑君だよ。おそろいだね! 」
『黄色いかえるのピクルス』
何気に可愛くてうれしい!!
彼は、わたしの腰でぶらぶら揺れている。
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