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神に祈ってばかりだった。
実際…何ひとつ叶ってはいないけれど。
素敵な人に出会えますように、
やりがいのある仕事に就けますように、
お金持ちになれますように、
神様は何と思っているだろう、
祈るばかりの私を…。
毎日がつまらない。
何事も思うとおりにはいかなくて、ストレスばかりが溜まっていく。
給料は安く、誰にでも出来そうな単調な仕事。
彼氏はもう数年いない。
転職やお見合いも考えてはみるけれど
…腰が上がらない…。
このままこうやってあと何年を過ごすのだろうか…。
そう思いながらやり過ごしていたある日、5年先輩の女性から声をかけられた。
「友達と集まるの。一緒に来ない?」
同じ部署だけど必要最小限なこと以外あまり交流のない女性、
ただ、比較的良い印象の人だった。
表情、言葉遣い、物腰の柔らかさ、服装、仕事ぶり…どれをとっても悪い評価を聞かない。
断る理由も予定もなく、その日の仕事を終えた後、私は先輩A子と小洒落たフレンチの店に向かった。
細長いテーブルを囲んで8人ほどの女性が座っていた。
「この前の続きから始めましょうか…」
A子が口火を切りつつ、こっそりと耳打ちしてくれる。
「簡単なお祈りよ…皆に合わせて。」
途端に聞いたことのない遠い国のことばのような音が聞こえてくる。
3~4分ほど続いたその音声が止んだ。
私から一番遠い席の女性が話し始めた。
「継続です。まだ効果は現れていません。早急な力が必要です。」
言いながら、1枚の写真をテーブルに置く。
1人の男性が写っている。
言い終わると、皆が中央に向かって右手を差し出す。
また、遠い国のことばが聞こえる。
次、となりの女性。
「新規です。3ヶ月のうちに…。」
また、写真が置かれる。そこには若い女性。
右手を伸ばして…呪文。
そう、まさにそれは呪文なのだ。
そう気付く頃には、6人の女性のプレゼンが終わっていた。
7人目…。
「継続です。…もう少しです。」
呪文。
8人目が終わり、A子の順番になった。
「継続です。」
テーブルに出された写真には見慣れた顔…直属の上司…だった男。
彼は先週退職した。
故郷に帰ると言って会社を去った彼は、その1週間後にこの世を去った。
交通事故だった…と聞いていた。
「ありがとうございました。完了しました。」
思わずA子を仰ぐ。
彼女は私の視線から目を背けて続けた。
「もう1人…新規です。」
テーブルにそっと置かれた写真。
皆の目が一斉に向けられる。
写真ではなく…私に。
意外だった、本当に。
何がいけなかったのだろう。
何が彼女の気に障ったのだろう。
ただ、もう手遅れなのだということだけは分かっていた。
遠い国のことばが響く。
気が遠くなりそうだ。
3年後。
「新規です。」
本日の出席者は10名。
毎月1回の開催で、あれから40回目を数えるだろうか…。
あの頃祈り続けた私の願いはある意味神に届いたようだ。
A子は5回の祈りで私の前から姿を消した。
素敵な出逢いにも
やりがいのある仕事にも恵まれてはいない。
だけど、最近考えるのだ…
神に祈ることで、私は誰を幸せにしているのだろう。
私は…
私を幸せにしているのだろうか…。
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