第15話 大切なもの

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「約束します」 「あの子、母の日の朝に、私の枕元にこれを置いたのよ」  一瞬何のことかと思っちゃったけど、静子さんの嬉しそうな顔を見てすぐにわかった。  なるほど、そういうこと。 「プレゼントってそういうものだって思ったのかしらね。私より早く起きて、そっとそれを置いて、すぐにまた寝たわ」  かわいい。  それをしっかり静子さんに気づかれちゃってるところが特に。 「静子さんは寝たふりをしたんですよね?」 「もちろんよ。最初は何をしているのかわからなかったもの。ちゃんと起きて枕元にある包み紙を見て、思わず笑っちゃったわ」  きっと静子さんは上手にリアクションをとったのだろう。  幸せそうな母子の一幕が容易に想像できた。 「私はその日の朝、すぐにそのエプロンを着けてご飯を作ったわ。そしたら他のみんなにすぐに気づかれて」  そのときの様子を知る人は、今の住民では四季さんと倉じいだけだ。  話を聞きたい気持ちもあったけど、これは静子さんとの秘密にしておこう。 「そこで枕元にあったことをお話したんですか?」 「そうね。私からは言いづらかったから、みんなに言ってもらったわ。サンタクロースじゃないんだぞって」  そのときの陸くんはどんな感じだったんだろう。  今の陸くんからはあんまり想像できないや。
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