25人が本棚に入れています
本棚に追加
第12話 滅多にできない経験
1
「莉亜ー、おつかれー」
お風呂上りに私が廊下で涼んでいると、どこからかパジャマ姿のカナンがやってきた。
あのパジャマは前に一緒にお買い物に行ったときに買ったもので、肌触りが良くて気に入ってるみたい。
「何持ってるの?」
「アイス!」
嬉しそうな笑顔を見せて、カナンが私の隣に座る。
カップアイスとスプーンを一つずつ持っているだけだから、私の分はなさそうだ。
ここ最近は夜でも寒くなくなってきたから、こうして二人で中庭を眺めながらゆっくり過ごす時間が増えている。
特に何をするわけでもないけど、これはこれで落ち着いたひとときだ。
ちなみに、私が通販で買った入浴剤はまだ残っていて、連日みんなから好評をもらっている。
そのときに私がカナンに対してちょっとだけ怒ったことがあったけど、あれからもカナンの態度に大きな変化はない。
私としてはひと安心だ。
「莉亜さー」
アイスを食べつつカナンが口を開く。
ひと口くれそうな気配はない。
「なに?」
人の名前を呼んでおきながら快調にアイスを口に運び続けるカナン。
私が返事するのを待っていたのかな。
最初のコメントを投稿しよう!