アオザイの国

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 まともな環境で勉強もさせない。また留学生らも金稼ぎに明け暮れ、勉学どころではなくなるという悪循環が多発している。ようやく国も重い腰を持ち上げ始めたという話は直也でも知っている。  このトゥンの場合は、実家の事業が台風被害で破綻しそうになったためで、その不運がなければ親からの仕送りも受けながら、大学進学を目標に勉強にも精を出していたはずである。直哉は三杯目を注文して言った。 「そんなに日本ってよく見えるのかなぁ」 「みんな子供の頃から日本のテレビアニメやドラマを見て憧れているよ。日本は先進国で、きれいで、日本人はみんな優しいイメージね」 「で、現実を知ってどう思う?」  直哉の問いに、トゥンは苦笑いで答えた。 「でも、仕事によってはお金が稼げるのは本当ね。今がそう。生活もよくなったよ」 「だから、何やってんだって」  トゥンは目を泳がせて言った。 「うーん、ここでは話がしにくいね。あとでボクのアパートに来ない? そこで話すよ」 「おまえさ、なんかヤバいことやってるんじゃないだろうな? ドラッグの売人とかさ」  トゥンは首を少し傾げ、微笑した。
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