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トゥンが鍵を回してドアを開けると、化粧品や香辛料の匂いが混ざったような独特の空気が鼻についた。照明がつき、促されて狭い玄関に入ると、五足ほどの靴が並んでいる。なかには女物のスニーカーやブーツサンダルもあり、直哉は目を見張った。
「おい、同居のタイ人って女なのか?」
トゥンは顔色を変えずに答えた。
「いや、違うよ……。さ、上がって。狭いけどボク専用の部屋もあるね」
短い廊下を歩くとダイニングキッチンがあり、中央に小さな二人掛けのテーブルと椅子があった。シンクには洗っていないフライパンや小鍋が雑に重ねられている。
正面と左側に片引き戸があった。どうやら2DKの間取りのようだ。トゥンは正面の引き戸を開け、照明のスイッチを入れた。
「どうぞ。ここがボクの部屋ね」
中に入ると、洋室六帖ほどの広さにベッドとドレッサーデスク風の机、窓際にはコーナーボックスがあり、その上に画面の小さいテレビが置いてあった。直哉は部屋を見回した。
「へえ、俺のアパートよりきれいだし、部屋も片付いているじゃんか」
トゥンは、机の椅子に直哉に座らせ、自分はベッドに腰かけた。
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