アオザイの国

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「学校は行ってないね。ボクは日本語だいたい覚えたから。もう行かなくても大丈夫。その分、働いた方がいいね」  たしかにレジ打ちをするだけでなく、宅配便の預りやATMの操作まで理解しなければならないコンビニ店員の外国人は、日本語能力が高くないと雇ってもらえない。 「で、今どこに住んでんの?」 「市内だよ。サカエ町、知ってる?」  地下鉄の駅があり、歓楽街の近くだった。場所的に家賃も高いはずだ。 「へえ、いい所だな。シェアハウスか?」 「いや、店の寮ね。学校の寮よりきれいだよ」 「店って、仕事は何してんだよ?」  やや間があって、トゥンは取り繕うような口調で答えた。 「ねえ直哉、今夜一緒にご飯どう? コンビニの仕事、今日は休みでしょう?」  土日は、学生のアルバイトが入るために休みが取れるのはトゥンがいた頃と同じだった。時間はある。しかし十か月前、トゥンが突然失踪したことで結構な迷惑も被ったし、裏切られたというわだかまりもまだ残っていた。 「いや……また今度にするよ。金もないしさ」
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