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金欠なのは事実だった。給料が振り込まれるまでまだ三日あるが、財布には千数百円しか残っていない。先週の日曜に、ほろ酔い加減でパチンコに行ったのが失敗だった。
「ご飯はボクがおごるよ。それにお金、借りていた一万円も返したいから」
「一万円?」
金を貸していたことなどすっかり忘れていた。そういえば疾走する少し前に、ベトナムの実家に急いで送金が必要になったから、いくらでもいいから貸してほしいと頼まれた記憶が頭に浮かんだ。
返金と、おごりという言葉が頭の中でオーバーラップし、心のしこりはどこかへ消えた。
「分かった。じゃあ、待ち合わせ場所は?」
「前に一緒に行ってた有明はどう?」
コンビニから歩いて五分とかからない、アーケード裏の路地にある安い居酒屋だった。トゥンがいなくなる前、よく二人で飲みに行った店だ。直哉は、夕方六時に待ち合わせの約束をして電話を切った。
待ち合わせの居酒屋までは徒歩で行った。コンビニに通勤する時には自転車を使うのだが、歩いても十五分ほどの距離だった。
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