アオザイの国

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 直哉はビールを一口飲んで言った。 「たしか、留学の目的も日本語の勉強だけじゃなく、日本の大学へ進学して養殖や経営のことまで勉強したいと言ってたもんな」 「エビは日本の商社に買ってもらうのが一番いいからね。でも直接交渉できないから儲けが少なかったね」 「それでおまえが、親族代表で日本へ勉強しに来たんだったな。で、あれからエビの養殖の方はどうなったんだ?」 「色々大変だったみたいだけど、三月からまた始めたよ。借金がもっと増えたけどね」 「そうか。それでおまえは、金を作るために仕事に専念してるってわけか。でも、ビザはどうなる? 日本語留学生はたしか最長で二年三か月だろ。去年いなくなる前、あと半年で切れるって言ってなかったか?」  外国人留学生が日本でアルバイトをする場合、雇い主は当然ビザの確認をする。更に留学生には資格外活動許可も必要となる。直哉は副店長扱いだったので、そのあたりの知識も多少はあった。 「大丈夫。更新したよ。まだ学校にはお金払っているから学生のままね」  トゥンは財布の中から在留カードを取り出して見せた。有効期限は二年ほど先だった。
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