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 由依は駅前で人を待つ。期待と不安を抱いて、人々が行き交う駅前を眺める。電車に乗ろうと急ぐ人、誰かと待ち合わせしている人。スマホを手に持ち、誰かを探している人……。 「もしかして、アリスちゃん?」  若い男が由依に声をかけてきた。 「はい、アリスです。野田さんですか?」 「うん。予約していた野田だよ」  間違いないと確信した由依は、自分に強く言い聞かせる。  今から3時間、自分は由依ではなくアリスだし、この人の『レンタル彼女』なんだからね、と。 「今日は3時間のご利用ということで、よろしいですか?」 「うん。よろしくね」  野田は由依よりも5歳、いや10歳くらい年上かもしれない。平凡な会社員という感じ。生真面目という感じでもないけど、遊び慣れてるという感じではない。  イケメンではないけど、そこそこ清潔感はあるし、めちゃくちゃダサい格好ではない。良くも悪くも平凡だけど、そこがまた緊張している由依を少し安心させた。  なにしろ、由依は今日初めて『レンタル彼女』になるんだから。
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