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旧友との再会を喜び互いの近況を話す内に男が夕張の鉱山で働いていると聞い
た高尾は上山の事を思い出しそれとなく尋ねてみた。
「その人かどうかは判らないが三年位前に夕張の廃鉱の視察に来た兄弟が発破事故に巻き込まれて亡くなる事故があったな」
驚いた高尾はその男の年格好や人相などを聞き上山だと確信するに至る。
事故にあって上山は既に亡くなっていたのだ。連絡が来なかったのもこれで合点がいく。
するとあの宝の隠し場所を知っているのは自分だけだ。もう遠慮することはない。
高尾は翌年から大町に引っ越して埋蔵金探しを始めた。
しかし行きもろくに周囲を見ていなかった上に、戻りは真っ暗闇の中を歩いた為、山の中をどんなに探しても通った場所がどうしても思い出せない。
それでも夜営した中腹の平らだった場所を探して歩いたが、月日が立ち地形が変わったのか懸命の探索にも関わらず見つけることが出来なかった。
思いは断ちがたく、やがて資金が尽きると小作人として仕事をし少し蓄えが出来ると山に登り埋蔵金を探す日々を続けて10年が過ぎた―
話を聞き終えた喜一は高尾に協力を申し出て、翌年から一緒に探索を行う。
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