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予想もしていなかった言葉に驚きを隠せずにいると、
「驚くのも無理はない。僕も最初に聞いた時、大層驚いた」
友人は矢継ぎ早に話を続ける。
「僕の家は代々大町で名主をしていてね。小作人を雇って畑を耕しているんだが」
「小作人の一人に高尾覚太郎という男がいる。こいつが小作人として働いて少し金が貯まると装備を整えて立山に行き佐々の埋蔵金を探す。そして見つからないとまた戻って来て小作人の仕事をするんだ。もう10年近くそれを続けている」
正直驚いた。10年も探しているなんて……
「よく諦めずにそんなに続くなぁ」
半ば飽きれた口調で言葉を返す。
「僕も最初はそう思った。しかしちゃんと理由があって、奴さん実際に佐々の埋蔵金を見ているらしいのだ」
「本当か!?」
「ああ、どうだい?話が聞きたくなっただろ」
「そうだな、君の家に行って話を聞いてみることにしよう」
こうして夏休みに入った二日後に喜一は友人の家のある長野県の大町に向かうことになった。
彼の話の通り、友人の家は昔からの素封家で屋敷も大層大きいものだった。
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