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相変わらず上山は雑談には応じるが肝心なことは話そうとしない。それでも今回の目的地が長野を越えた先、富山であることが薄々知れた。
果たして富山に着き、更に別の路線に乗り換え高尾の全く預かり知らぬ駅に降り立った二人は駅前の商店で一週間分の食糧や野営に必要なテントなど様々な物を買い込みそれを高尾に持たせ町中を抜けた。
途中、大きな川の側を通り(この時の高尾は知らなかったが後に常願寺川と知る)山に向かって早足で歩く。
重い荷物を背中に背負い(山に登るのか)思いながら高尾も歩を進める。
上山は逡巡する様子も無く山に入るや否や道なき道をどんどん進んだ。
この山に何度も来ていて歩き慣れているのが感じられる歩き方だ。
高尾は上山の背中に付いて行くのが精一杯でとても景色など見ている余裕はない。
やがて山の中腹付近の平らになっている小さい広場の様な場所に出た。
こんな所に平らな場所があるのは不自然だ。長年の山生活で培った高尾の勘がそう告げる。
「今夜はここで夜営する。テントを張ろう」 そう告げた上山に高尾は思わず聞き返した。
「ここが目的地なんですか?」
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