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無言を貫く上山に(さては気付かれたか)と不安な高尾だったが、やがて整備された山道に出ると不意に上山が振り返り尋ねてきた。
「見たか?」
答えに窮した高尾を見詰め
「やはりそうか。まぁ、見てしまったものは仕方がない。しかしよもや持ち出してはいまいな、念のため体を改めさせてもらう」
有無を言わせぬ口調で告げ服を脱ぐ様命じた。
言われた通り下着だけになった高尾を見て何も持ち出していないと判った途端、上山の口調が優しくなった。
「君を疑う様な真似をして済まなかった。実はあれは佐々成政公の隠した軍資金でその埋蔵を命じられた重臣の子孫がこの俺だ」
驚くべき告白だった。
「家に伝わる絵図面を元に調査を続け、漸くあの隠し場所を見つけた。徳川の世もとうに終わり、もう世に出しても問題ないと判断した。しかしあのままの状態で出しては怪しまれる。そこで」
上山は意味ありげに笑い、
「今、弟が夕張で金の廃鉱を探している。買い取り次第、金を持ち込んでそこで溶かし山から出た事にすれば誰にも怪しまれない」
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