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笹迷宮
一
昭和54年に長野県大町市に住む中山喜一という老人が亡くなった。
彼は30年以上の間、立山で佐々成政の埋蔵金を探しており大町では名の知られた人物である。
家族はいたが埋蔵金の事については殆んど話さなかったので彼が何処で何をしているのか全くと言っていい位知らなかった。
葬儀が済み遺品を整理していた家族はその中から彼が30年かけて調べあげた成果を書き記した膨大な探索記録を見つける。
その中には探索の日々を綴った探索日記も含まれており、冒頭に何故自分が佐々成政の埋蔵金を探すようになったのかが書かれていた。
それは―
喜一が帝大生だった大正も終わりの夏、ある時同級生に声を掛けられた。
「君、夏休みはどうするんだ?」
「特に予定は無いな、実家に帰省しようかと思っているが」
答えると友人は唐突にこんなことを言い出した。
「ということは暇なんだな。どうだ、長野にある僕の実家に遊び来ないか」
「それは構わないけど……でもどうして?」
友人は思わせ振りな口調で
「ちょっと面白い話があるんだ。君もきっと興味を持つと思う」
「なんだい?面白い話って」
「佐々成政の埋蔵金さ」
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