当日レンタルの悲哀

1/3
前へ
/3ページ
次へ

当日レンタルの悲哀

今日という日のために、私は最高のセッティングをした。 わざわざ都心の店に行って買っておいた、定番のマカロン。 ちょっと奮発したスパークリングワイン。 どうしても観たかった恋愛映画のDVDはまだ新作料金だったので、上記二点にお金を使ってしまった私は当日レンタルをして節約。 自室のローテーブルに調達した物たちを並べると、いつもの六畳間が途端に素敵になった。 そんな日曜日の午後。 可愛くなった部屋に呼んだのは、一番仲の良い友達・沙羅だ。 「久しぶりー!お邪魔しまーす」 「いらっしゃーい!早く映画観ようよ!」 「あはは、美希、はしゃぎすぎ」 友達と気兼ねなく過ごす休日が、私にとって一番のリフレッシュだ。 一緒に映画を観ながら、主人公のファッションをほめそやし、恋人の甘い言動にキャーキャー騒ぎ、ライバルの横槍にブーイング。あーだこーだと思うがままに喋りながら、マカロンとワインを全てお腹に入れた。 「うう…一日が終わってしまう…」 早くも夕方。 明日は仕事…ああ、考えたくないな。 「仕事の時間は長いのに、休みは一瞬で終わるよね」 ベッドに横になりながら、沙羅がそんなことを言う。 このベッドに自分以外の人が寝ているのを、久しぶりに見た。 タンクトップとショートパンツから伸びる、沙羅の長い腕と脚。 「あーあ。DVDを返したら、休みが終わっちゃうよ」 ため息を吐く私に、沙羅がクスクスと笑う。 「返さなくても終わっちゃうんだけどね。よし、じゃあ、一緒にDVD返しに行こうか」 「うん」 私は頷いた。 頷くしか出来なかった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加