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当日レンタルの悲哀
今日という日のために、私は最高のセッティングをした。
わざわざ都心の店に行って買っておいた、定番のマカロン。
ちょっと奮発したスパークリングワイン。
どうしても観たかった恋愛映画のDVDはまだ新作料金だったので、上記二点にお金を使ってしまった私は当日レンタルをして節約。
自室のローテーブルに調達した物たちを並べると、いつもの六畳間が途端に素敵になった。
そんな日曜日の午後。
可愛くなった部屋に呼んだのは、一番仲の良い友達・沙羅だ。
「久しぶりー!お邪魔しまーす」
「いらっしゃーい!早く映画観ようよ!」
「あはは、美希、はしゃぎすぎ」
友達と気兼ねなく過ごす休日が、私にとって一番のリフレッシュだ。
一緒に映画を観ながら、主人公のファッションをほめそやし、恋人の甘い言動にキャーキャー騒ぎ、ライバルの横槍にブーイング。あーだこーだと思うがままに喋りながら、マカロンとワインを全てお腹に入れた。
「うう…一日が終わってしまう…」
早くも夕方。
明日は仕事…ああ、考えたくないな。
「仕事の時間は長いのに、休みは一瞬で終わるよね」
ベッドに横になりながら、沙羅がそんなことを言う。
このベッドに自分以外の人が寝ているのを、久しぶりに見た。
タンクトップとショートパンツから伸びる、沙羅の長い腕と脚。
「あーあ。DVDを返したら、休みが終わっちゃうよ」
ため息を吐く私に、沙羅がクスクスと笑う。
「返さなくても終わっちゃうんだけどね。よし、じゃあ、一緒にDVD返しに行こうか」
「うん」
私は頷いた。
頷くしか出来なかった。
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