自覚は唐突に

1/4
前へ
/4ページ
次へ
「ねぇ、森。この指の中から好きな指を一本選んで」  突然の脈絡のない言葉と共に、浜田の右手が目の前に生えてきた。読書を中断させられ、じろりと睨む。 「邪魔。どけろよ」  ちょうど犯人を追い詰めている良いシーンだったので、俺の声がとがる。 「そんな怒んなくても、いいじゃん。選んでくれたらすぐ済むんだからさ」  俺の苛立ちには気づいているだろうが、どこ吹く風で「早く選んでよ」と手を振り、急かしてくる。キレイに整えられた爪が目の前で揺れた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加