自覚は唐突に

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「なんだったんだ」  突然のことに困惑して眉間に皺が寄る。見送った視線を戻すと、カバンにちゃんと入っていなかったのか、浜田が読んでいた雑誌が残されていた。すっかり読書の気がそがれた俺はしおりを挟んでそれを手に取った。  最近よく見るアイドルが表紙を飾っているファッション誌のようだ。先ほどの浜田の態度に何か関係があるかもしれないと開いてみる。関係なさそうなページをどんどん流してめくっていくと『これで気になるあの人の気持ちが分かる!』の題名と共に心理テストが載っていた。 「これをやってたのか」  急に指を選べと言ってきた理由(わけ)が分かった。知ってすぐに試したくなって聞いてきたんだろう。どんな結果が分かるか読み進めると、選ばれた指で相手からの好感度が分かるらしい。親指は親友、人差し指は仕事や学校でのパートナーで中指は友人らしい。 「たしかあれは、薬指だったような」  記憶をたどった俺は、薬指の欄を見て大きく目を見開いた。 「な! ちがっ、あれはたまたま!」  もう浜田は居ないのに、思わず言い訳めいたことを叫んでいた。
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