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3
初めての時、自分の馬鹿な選択に嫌悪した。
実際問題として糞みたいに痛かったし、物以下の扱いだったのだろう熱のこもらない瞳で禄に見ることもない。
だから、その時が底だと思っていた。
それより、馬鹿みたいな事にはならないんじゃないかって能天気に思っていた。
好きだという気持ちは胸の奥に確かに残っていたけれど、もうどうこうなりたいとかそんな気持ちは消え果ていた。
そのまま、性欲処理として飽きられるまでそのままで、飽きられたらハイお終いな物だと信じていたのだ。
だから、自分の体の変化に心がついていかない。
◆
「んっ、あッ……。」
こらえていた声が思わず出てしまい、慌てて舌をかむ。
夏目がニヤリと笑ったのが分かる。
「ホント、お前男の癖に女みたいに淫乱だよな。」
声を上げてしまった内側の箇所を夏目の怒張がえぐる。
のけぞってその感覚を逃そうとするけれど慣れないためか全く意味は無かった。
ただ、それが快感と呼ばれるものなことは知ってるし、夏目の言うとおり淫乱なのかもしれないとは思う。
けれど、目の前の男に腕を伸ばしてすがりつく事もできないし、海音の様に奔放にそれを楽しむ事は到底できそうに無い。
「この前みたいに、無反応でいろよ。そうすりゃそのうちこっちも飽きるんだからさ。
それとも、淫乱だから我慢できないって話しか?このビッチが。」
ニヤニヤと言われ、否定したいのに口を開けば出てくるのは嬌声ばかりで、自分の甘ったるい声も、それから痛いくらいに張り詰めている部分も何もかもが嫌だった。
なにより、夏目が果てた後、高ぶっている体をもてあます様になったのが一番嫌だった。
だけど、夏目の家で自慰をするのも嫌だったし、多分トイレなりでしようとしても夏目が嫌がる事くらい分かっていた。
唯一、マシになったのは帰るときに足腰がまともに歩ける程度になった点位だ。
体の芯の部分でくすぶっている欲望は無視をして服を着る。
今が冬でよかった。ぐちゃぐちゃに皺になった服もその中でべたべたのぐちゃぐちゃになっている体も大体の部分はコートで隠せた。
「なあお前、いま俺以外の相手いるのか?」
布団の上に胡坐をかいたままの夏目が言った。
「……さあ?」
なんて答えようか、しばらく悩んだけれど、兄弟が奔放な性事情を送っていることは知っていても、それ以上の具体的な人数は知らなかったので答えようが無かった。
チッとかなり大きな音を立てて夏目が舌打ちをした。
意味が分からなかった。
「別に俺に興味が無いのに、何でそんな事わざわざ聞くんですか?」
本音だった。
セックスは重ねているけれど、最初から夏目は多分俺に大して興味が無い。
だからこそ、勘違いでセックスができた訳だけれど、大前提として夏目は俺のことなんかどうでもいいのだ。
なのに、わざわざ俺のことを聞くという事実があまりにも不思議すぎて思わず聞いてしまった。
多分、疲れていたのだ。じゃなきゃ単なるセックス相手にこんな質問しないってことに気が付いて何も言わなかったはずなのに。
「……さあ?」
今度は夏目がニヤリと笑いながら先ほどの俺の台詞を繰り返した。
まあ、そうだろう。まともな理由なんて返ってくる筈のない質問だった。
「帰ります。」
それだけ言うと俺は夏目のアパートをあとにした。
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