自分を信じて

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 案内係が僕を3位の旗の場所まで案内すると、そこにはクラスのみんなが集まっていた。僕は目を合わせられなかった。 「ごめん。みんながせっかく……」  僕の目から涙がこぼれた。それは無意識に、突然だった。そして理解した。  僕は悔しかったのだ。みんなの努力を無駄にしてしまったこと。不甲斐ない自分の走りに。  もう言葉にならなかった。言葉にしようとしても、涙が邪魔して声が出せない。こんなに泣いたのは、生まれて初めてだった。  髪を逆立てた生徒が僕の元に歩み寄ってきた。そして、僕の腕の無言で握り、みんなの輪の中へと連れていった。  そして男子生徒が僕を囲んだ。僕の身体はみんなに抱えられ、僕はその場で数回、宙に舞った。  突然の出来事に驚いて、いつの間にか涙は止まっていた。周りからは大きな拍手が湧き起っていた。  胴上げの後、僕は静かに地面に下ろされた。肩を叩く者、背中を擦る者、みんなが僕を慰めてくれた。  僕はみんなをまともに見ることはできなかった。だって、また涙が溢れてしまったから。
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