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壺に入って妖精がやってきた。
丸い大きな壺である。白地に透明な青で木の絵が描かれている。これは東洋種の妖精であると協会の女性が言っていたので故郷の絵なのかもしれない。蝋引き紙で上から封されていた蓋を外すと、ぶうわりと不思議な匂いが立って、妖精が外へ出たのが分かった。
姿は見えない。しかし、確かに何かの影が、ダイニングテーブルを掠めて、暖炉の前をくるりと回り、植木鉢ごしに窓から庭の様子を確かめて、またテーブルのところへ戻ってきたのが分かった。まん中に置いておいた牛乳瓶を確かめて、しかし特に舐める様子はない。(これは儀礼的なものだと聞いていたのでそれは良い)
「留守の間、よろしく頼むよ」
ぼくはそう言って、帽子をかぶった。
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