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 ニヤリと口角を持ち上げた顔がゆっくりと近付いてきて、私はぎゅっと目を瞑った。  ぬるり。 「!!」  声にならない悲鳴を上げ、ケンちゃんの胸を強く押し返す。得体の知れない何か(、、)から耳を守るように押さえ、正面の顔を見た。 「な、な?」 (舐めた!?)  パクパクと口を開けるが言葉にならない。少しだけ俯いた顔は乱れた前髪の隙間からこちらを見つめ「ヒドイなぁ」と呟いた。 「もう。痛かったじゃん」  ケンちゃんは乱暴に前髪を掻き上げてぺろりと舌を出す。紫色した生き物みたいなそれが唇の上をゆっくりと這うと、ピンク色がグロスを付けたみたいにぬらぬらと光る。
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