5/8
前へ
/45ページ
次へ
「い、今、何……」  ケンちゃんは片足に体重を掛けて、腰に手をやった。くしゃりと乱れた前髪の隙間から眇められた瞳が覗く。 「ココアさんの汗を確かめたんだよ」 「確か……める?」 「そう。だって汗占いだもん。舐めなきゃ味が判んないでしょ」 「あ……あ……」 (味?!)  ケンちゃんは蠱惑的に口角を持ち上げ、もう一度舌なめずりをした。耳には冷たい感触が残っている。 「ココアさんは実家暮らし。そして彼氏がいない。当たってる?」 「!」  この短時間で事実を言い当てられたことに驚愕する。そんな怖さと得体の知れない気持ち悪さに、ずるりとブーツを引き摺って後退った。店内の掃除は行き届いているけれど、ここの床はどこか砂っぽい。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加