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「い、今、何……」
ケンちゃんは片足に体重を掛けて、腰に手をやった。くしゃりと乱れた前髪の隙間から眇められた瞳が覗く。
「ココアさんの汗を確かめたんだよ」
「確か……める?」
「そう。だって汗占いだもん。舐めなきゃ味が判んないでしょ」
「あ……あ……」
(味?!)
ケンちゃんは蠱惑的に口角を持ち上げ、もう一度舌なめずりをした。耳には冷たい感触が残っている。
「ココアさんは実家暮らし。そして彼氏がいない。当たってる?」
「!」
この短時間で事実を言い当てられたことに驚愕する。そんな怖さと得体の知れない気持ち悪さに、ずるりとブーツを引き摺って後退った。店内の掃除は行き届いているけれど、ここの床はどこか砂っぽい。
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