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――僕が、占ってあげる。
いくら顔が良くても。
――結花ちゃん。これあげよっか。俺の特製クリーム。
親切でも。
(無理なものは無理)
顔を上げ、窓からカラリと晴れた冬空を見た。工場のトタン屋根の上に冷たく淡い水色が広がっている。
「専務。名古屋に行ったことあります?」
ボールペンをカチンと鳴らして芯を出しながら訊いた。
「何? 突然。そりゃあ行ったことくらいあるけど。何かあるの?」
「ちょっと行ってみようかなって思ってるんです」
あらそうなの、名古屋って言えばね、と続く声をBGMに、私の意識は狭い事務所を抜け出して、低温の青空へ飛んでいく。
――ココアさんのはね……寂しい女の味がする。
何が寂しい女の味だ。そんなものは私の表面にすぎない。私の身体の中心にだってぐつぐつと煮えたぎる熱いマグマが眠っているに違いないのだ。
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