31人が本棚に入れています
本棚に追加
「結花ちゃん。名古屋に行ったら、皆にお土産買ってきて頂戴よ。ほら、小出さんにもクリームのお礼とか」
専務は早速、名古屋名物を指折り数えている。感心する程に現金な人だ。
「分かりました」
(狭いコミュニティーにはもううんざり)
二十時以降も開いている店がいくつもある場所に、電話番号もちゃんと十桁で書かれている場所に行ってみよう。
(まずはそこから)
増えた選択肢の先に、きっと何かが待っている。
(甘い汗だってかいてみせるわ)
汗占いだなんて信じないけれど、汗に味があるっていうのは少しだけ――本当に少しだけ理解できる。緊張して嫌な汗がでるのだって、感情が大きく影響されているからな気がするもの。
(ケンちゃんにはこれっぽっちも同情しないけどね)
四角い窓の外、トタン屋根から真っ直ぐに飛行機雲が伸びていた。
了
最初のコメントを投稿しよう!