消しゴムじゃなくて

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 それからしばらく経ったある日。 「手、かして」  彼は私にそう言った。  黙って歩いていたら、小さな「ありがと」が 右耳に届いた。見上げると、「返事くれて」と続いた。  私はうつむいて、「こちらこそ……ありがと。返事、待っててくれて」と返した。    彼も、きっと私も、その日の夕陽みたいな色の顔をしていた。    
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