海猫がニャーと鳴いた日

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刑事が重要参考人の行方を追って半年が過ぎた頃。 強引とも言えるその行動哲学は同僚達から煙たがられ、いつしか毎日の地道な捜査は単独で行われることが常となっていた。 そんなある日の事。 数時間前に入手したタレコミを手がかりに、急ぎ捜査車両で郊外のショッピングセンターへ向かう。 いつものように一人で。 今日も変わらず実りのない日か…と思いつつ、駐車場へ降り立った。 そんな刑事の思いは到着した早々かき消される事になる。すぐさま重要参考人を発見し、呆気なく確保する事に成功したのである。 済んでみれば何とも拍子抜けなもんだなと、安堵をつく刑事。 が、しかし急転直下の事態が刑事を襲う。 好事魔多しとはよく言ったもの。 いとも簡単に事が運んでしまった緩みからであろうか、また、捜査上リスクある単独行動であったことも禍いし、重要参考人に一瞬の隙を突かれてしまう。 乗ってきた車両は奪われてしまい、まんまと逃亡を許すハメに。 一度は手に掛けたはずの獲物が、指からするりと抜け去っていく感覚。 何たる失態! そんな思いを悔やむ間もなくそれが無駄であると知りつつも、自らの足で追いかけ始めた。 無力さを感じながらも走るしか術のない、そんな刑事の視界に入ったのは、たった今駐車場にバイクを止め、ヘルメットを外す青年の姿。 すぐさま走り寄って青年に近づいた刑事は、内ポケットから取り出した警察手帳を見せこう言った。 「警察だ。ちょいと借りるぜ」 これこそ刑事の行動哲学。 戸惑う青年を尻目にヘルメットを奪うようにして装着すると、バイクに飛び乗りアクセル全開走り出す。重要参考人が走り去って行った方向へ爆音を響かせながら。 バックミラーには、 「おれのバイク〜」 と、叫び追いかけるも転倒する青年が映っていた。 「すまん、青年」 刑事はそう呟くと、颯爽と駐車場を後にした。
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