海猫がニャーと鳴いた日

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夕陽を浴びて赤く染まっていく倉庫の壁。それを見ながら先を進む青年は前方の防波堤に近づいていく。この道の行き止まり、終着地だった。 立ち並んでいた最後の倉庫の前に、車が1台停車している。そしてすぐそばにエンジンが掛かったままのバイクが、スタンドを立てすっくと止まっている。 青年はバイクの状態を確かめた。幸いにもキズは見当たらない。ヘルメットはバックミラーに被せるように掛けられている。 (よかった、無事で) 車体に手を当てると、エンジンの振動が身体全体に行き渡るのを感じた。 続けてシートバックにそっと手を当て、中身を確認する。 (コイツも無事のようだ) 青年はヘルメットを被りバイクを跨いだ。 心地よいエンジン音と振動が、青年の身体に沁み渡り一体化していく。 (よし、戻ろう) ハンドルを切って走り始めようとした時、バックミラー越しに倉庫の扉から出てきた男達が見えた。 バイクを奪った刑事と、その横には後ろ手にされて捕らえられている男。 刑事の事情など、青年にとっては最早どうでもよかった。 青年はバックミラー越しに刑事に頷くと、爆音響かせ倉庫群を後にした。
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