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episode.1
あれは確か七つか八つの頃、両親と新幹線や電車を乗り継ぎ田舎の祖母の家へ帰省した話である。私は初めて乗車する新幹線や、初めて尋ねる祖母の家に期待と少しの緊張感で、帰省する前日はあまり眠れなかった。そのせいか楽しみにしていた新幹線はぐっすりと眠ってしまい、目を覚ます頃にはもうすでに都会から見たこともない田園風景へと変わっていた。私は新幹線から二本目の電車まで寝ていたという。乗り換えは母の気遣いにより、私を起こさずに父がおぶってくれたことでここまで寝てしまったらしい。新幹線特有の瞬く間に変わる景色が見れなかったのは残念だったが帰りは景色を見ようと決心する私だった。そんな事から数十分、ようやく祖母の家の最寄りに到着した。駅には祖父が古い形の車を止めて煙草を吸っていた。なぜかそれはひどく様になっていたような気がする。すぐさま祖父は私たちに気がついて、母や父と軽い挨拶を交わしていた。最近どうだ?とかこの暑さには参るだとか、軽い会話をしながら、そこそこの旅行分くらいある荷物をトランクに詰め込んでいた。祖父には大きくなったな、なんて言われ母は祖父の煙草について咎め、父はそんな母を宥めてていた。私はその様をただ眺めていた。暫くして準備が出来たので少し古くさい車に乗り込む、私は助手席から眼下に広がる景色を見るのが好きなのですぐさま助手席に乗り込む。「それじゃあ、行くか」と祖父の言葉を皮切りに車が動いた。向かう先は当然、祖母の家だ。
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