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車は、寂しげな街灯が並ぶ本通りに出て、コンビニの前で静かに止まった。
悠一が無言の儘、車から降りようとした時。
「おまえ、これから、勝手にいきな …… 」
と、登美子の不愉快そうな声が飛んで来た。
悠一は黙ったまま、フン、という顔をした。
勝手にいきなは、勝手に行きな、とも、勝手に生きな、とも、取れたが、どっちでも良かった。
登美子は運転手席の窓を開けると、御金の入った封筒を、ポイと車道に投げ捨てた。
通りに並ぶ街灯の空しい光の列が、遠い闇の空間に向かって、連なっているように観えた。
白い外車は不気味な音を立てて、本通りの果てに消えて行った。
これで登美子の姿は、永久に観る事は無い、と、思った。
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