汚(けが)れ 無き 路

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 悠一が、抱きかかえる お姉さんの体は軽かった。  美しかった お姉さんの顔は崩れて変形し、血にまみれていた。    バシャバシャと当たる雨で、顔面から溢れる血は、流されている。    死んでいると思われた お姉さんの清楚な口から、透き通るような声がした。 「大丈夫です… 私の体は、直ぐ治ります…… 」  その言葉を証明するかのように。    血と泥にまみれていた お姉さんの体も、欠けて崩れていた顔も、バシャバシャと降り注ぐ雨粒で見る見るうちに清らかな美しい姿に、生った。    お姉さんの清らかな声が。 「この吹き荒れる雨が、(けが)れた世界を、(けが)れた体を、(けが)れた心を、綺麗に洗い流してくれます」  と、言った。    雨はザーザーと落ちている。    透き通るような美しい声が、また、雨の中に響いた。 「この雨粒たちが、私の(けが)れた体を、(けが)れた心を、綺麗に洗い流して呉れました… 私は、汚れのない世界に戻ります…… 」    お姉さんの透き通る姿は揺らぐように、雨煙の中に消えた。     これは!?    悠一(ゆういち)は、直ぐに、神社脇の林道へ駆けた。
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