汚(けが)れ 無き 路

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 悠一は林道の入り口で、目を見張るように立ち尽くした。    林道の両側に激しい雨に打たれながら、百合の花がずらりと並んで彼方まで連なっていた。  片側には白いユリの花が、反対側にはオレンジ色のユリの花がズラリと並んでいた。    林道の先に、お姉さんの透明な後姿が観えた。  悠一(ゆういち)は、必死に叫んだ。 「お姉さん ! 」    悠一は、もう、幻覚でも妄想でも如何でも良かった、お姉さんの世界に()きたかった。  振り返る お姉さんの透き通る顔が、にっこり微笑んだ。    お姉さんの眼が、オレンジ色のユリの花を見詰めながら。 「オレンジ色のユリの、花言葉は、温かい、です」  と、言った。 「ええっ ?」  オレンジ色のユリの花言葉は、華麗・愉快・軽率で、温かい、ではない。  でも悠一には、お姉さんの囁く言葉が、温かく、感じた。  不意に、透明な お姉さんの顔が、悲しそうな表情に生った。 「悠一さん、(けが)れの無い心で、来てください… 待っています…… 」  お姉さんの後姿が、渦巻く雨の空間に消えて行った。    林道に並ぶユリの花が、雑草に変わっていた。  悠一は踵を返すと、土砂降りの雨の中、真っ暗な神社の空間に向かって駆け出した。
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