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車道の周辺は薄暗くなっていた、悠一は神社の鳥居を潜ると時、不可解な顔で立ち止まった。
円柱の寂れた赤い色が何時もと違った色に観えた。所々が剥がれて燻っていた薄い赤色が、ベットリと、どす黒い血の色が塗られているように観えた。
石段から続く参道は壊れた石畳が並び、周りを天まで届きそうな杉の巨木が連なり、昼間でも寂しく暗い。
悠一は、闇の参道を、突っ切るように駆けた。
参道を抜けると、寂れた社の前に少し開けた土の広場が在る、そこだけが昼間に光が射す。
悠一は、ぼろぼろに成った賽銭箱の後ろの石段を駆け上がり、荒れ果てて幻のように建つ社の扉を開け、中に入った。
8畳ぐらいの広さの中はガランとしていて、枯渇した灰色の板張りの床と壁に古ぼけた木組みの小さな窓口が在った。
悠一は床にカバンを置き、その上に学生服を脱ぎ捨てると、社の後ろに在る雑木林に向かった。
悠一は背丈ぐらいの高さの雑草が密集する中で、木板を使い砂土を掘って穴の中から、お菓子が入るような金属箱を取り出した。
悠一が金属箱の蓋を開けると中に、ビニール袋に入った御札が観えた。
ビニール袋の中には、300枚以上と思われる1万円札が、乱雑に入っていた。
悠一は、そこから1万円札5枚を取り出し財布に入れた。
悠一は金属箱を元に戻し、土砂を被せて覆った。
雑草の乱れを元に戻した悠一は、微かに空しい顔をした。
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