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悠一が鳥居の下の石段に座り込み、真っ暗な暗闇に目を凝らし始めてから、2時間近くの時間が経過していた。
石段前を、お姉さんの姿が現れる事も通る事も無かった。
諦めきれない悠一は、神社の脇の林道の先に在ると思われる、お姉さんの家に行って見ようと思った。
車道と林道の境目を、街灯の侘しい光が照らしていた。
カバンを下げて、林道を入って行こうとした悠一は、オヤッと驚くような顔で立ち止まった。
林道の入り口とも車道の脇とも言える場所に、黄色いユリの花が咲いていた。そして、少し離れた林道側に白いユリの花が咲いている。
確か凝んな場所にユリの花など、無かったはずだ ?!
林道側の、白いユリの花が、悲しそうに寂しそうに観えた。
悠一は、植物図鑑や動物図鑑を何冊か所有していて、観て調べるのが好きだった。
白いユリの花言葉は、純潔、だ。
白ユリの花が、清純な美しい、お姉さんの顔と重なった。
白ユリの花が悲しそうに、林道に入って来てはいけません、今は入って来ないで下さい、と、言っているように観えた。
手前の黄色いユリの花の色が、燻っているように観えた。
汚れて、穢れているように観えた。
黄色いユリの花言葉は、偽り、だ。
悠一は、林道に入るのを躊躇した。
幻の、お姉さんの家に向かうのを止めた。
向き直る悠一は、偽りの、自分の家路に向かった。
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