愛と一緒に猫パンチ!

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 ***  あたしと大福は二か月の時に親戚の家で生まれ、坂本家に引き取られたのだった。あたしの方がちょっと早く生まれたので、あたしの方が姉。まあ、二十分程度の違いだったので、あんまりどっちが姉とか妹とかいう意識はないのだが。少なくとも、大福に姉として敬われた覚えはまったくといっていいほどないのだから。  赤ちゃんの時から目を合せれば睨みあいが始まる関係性だったのに、どうして二匹一緒の家に引き取られることになってしまったのだろう。母猫を飼っていたお宅が“一緒に引き取られれば仲良くなれるだろう”と思ったのか、あるいは坂本家がピンポイントであたし達を選んでしまったのかは定かではない。  ちなみに、あたしの毛色はグレーの縞模様。最初は“ごま”って名前がつけられる予定だったんだとか。いや、結局食べ物なんかい!とツッコミを入れたい。  まあ、あたし達が引き取られた理由はなんとなくわかっている。その当時、坂本家は随分とピリピリしていたからだ。坂本家の構成は、父母長男次男の四人家族。あたしと大福が引き取られた頃、丁度長男が受験生だったのである。長男に懐いていた次男もまた、遊んで貰えないことに随分とイラついていた様子だった。それで、全体的に家の中の空気が悪くなっていたのを、猫を飼うことで一変させようという目論見だったらしい。  まあ、その結果。家に来てしまったのは、そのへんのオスより遥かに荒々しくて喧嘩っ早い、あたしと大福の姉妹だったわけだが。 『ちょっとおおおおおおおおおおおおおお!何してくれちゃってんのおおおおおおおおおおおおおおお!?それ、あたしが貰ったオヤツだろうが、横取りしてんじゃねえよ!!』 『はあ!?これは飼い主が私にくれたのよ、クソ姉貴はそのへんの埃でも喰ってれば!?』 『んだとてめえ!?戦争か?戦争なんだな?ならちょっと表に出ろやゴラァ!!』 『ええ、ええ、いいわよ!返り討ちにしてあげるわよ!!』 『ああああお前ら二匹とも落ち着けってばあああああ!?』  家の空気を落ち着かせるどころか、嵐を巻き起こして終わった。  前の家では母猫の目もあったし、他の兄弟姉妹への遠慮もあったのでちょっと睨みあいの鳴き合いをするくらいで終わっていたのが。ここでは自分達二匹のみ。好きなだけ喧嘩し放題だったのである。
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