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まあ、暴れん坊な自分達の世話のために、ある意味彼等も一致団結せざるをえなかったようだが。残念ながら、肝心の兄弟の不仲は改善されなかったのだった。
大福のことは嫌いだけれど、この家の家族のことはあたしも嫌いではない。
特に、おっとりした兄とつんつんしているけど本当は優しい弟、はどっちも好きだ。よく遊んでくれるし、必要以上に構うということもしない。丁度良い距離感を保ってくれるという意味では、まさにベストパートナーと言っても過言ではなかったのである。ただ、あたし達とは別の意味で兄弟関係が悪いままというだけで。
「ぜーはー」
「ぜーはー……」
その日も、あたしと大福は喧嘩疲れてリビングに転がっていた。お互いの顔に何回猫パンチを決めたかしれない。ぐったりしていると、がちゃりとドアが開く音が。玄関を見れば、次男が帰ってきたところだった。
「ただいま」
むっすっとした声で言う次男。彼はさっさと手洗いを済ませると自分の部屋に行ってしまった。――リビングにいる長男に声をかけることをせずに。長男はそんな彼をちらっと見ると、ちょっと悲しそうに眉を下げている。
「……本当に冷戦状態なんだな、あの二人」
思わずあたしが寝っころがったまま言うと、そりゃそうでしょうよ、と大福が答えた。
「次男君も中学生だもの。反抗期ってやつだってテレビで言ってたわ。難しい年頃なんですって」
「二年前は、兄貴に遊んで貰えなくてすねてるくらい、兄貴大好きだったのにな。むしろ、受験の邪魔されて兄貴の方が弟を邪険にしてたくらいだったのに」
「そりゃ勉強邪魔されたら怒るのは仕方ないでしょ。ただ……長男君も、小学生だった弟にちょっと冷たくし過ぎたって後悔してるみたい。だったら、はっきりそう伝えればいいのにね。長男君も無事、第一希望の高校に行けるようになったんだし」
「……まあ、男にもいろいろあるんだろ。簡単に割り切れたら世話ねーよ」
ことあるごとに喧嘩するあたし達だったが、家族のことについては普通に話すことも少なくない。理由は単純明快、これについてはあたし達も目的が一致しているからだ。
「でも、仲良くして欲しいよな」
「……そうね」
あたし達が言うのもなんだけれど。大好きな家族が円満であるに越したことはない。
できれば兄弟には、仲良くしていて欲しいというのが本音なのだった。
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