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「弟は俺を恨んでるから。……長男君、そう言ってたわ」
どうやらあたしが次男の話を聞いている間に、大福は長男の話を聞いていたらしい。この一家、猫に語りかけすぎではなかろうか。人間ってこんなもんなんだろうか。あたし達が言葉を理解できていることも知らないはずなのに。
「それからね。こうも言ってたのよ。“ひょっとしたらお前達姉妹が仲が悪いのも俺らのせいかな。俺達がこんなんじゃ、お前らも仲良くする気なくすよね”って。……そんなの、全然関係ないのに」
「そうだな、あたしら、この家に来る前から仲悪いしな。……でも人間には、そんなのわかんないんだろうな」
「うん」
ちょっとナメているのは否定しないけれど。それでもこの新しい家が、あたしも大福も大好きなのは間違いないのだ。キャットフードのチョイスはいいし、玩具もセンスがいいものを飼ってくれるし、ほどほどに遊んでくれるし可愛がってくれるし。だから、できればそんな家族の空気が温かいものであってほしいとも願っているのである。そもそも、あたしと大福は本来そのためにこの家に来たはずなのだから。
「あのさ、大福。……あの、なんだけどさ」
本当は嫌だけれど。とてもとても嫌だけれど、でも。
「暫く……休戦にしねえか」
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