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愛と一緒に猫パンチ!
あたしは猫である。名前はいちご。あたしを飼っている坂本家の長男が名付け親だ。
いちごっていかにも美味しそうでカワイイ名前だなんて言われるけど、名前ほど可愛い性格はしてない。自分でも思う。ぶっちゃけ、生まれてきた性別間違えてんじゃね?と。できることなら外にパトロールしに行きたいし、この家の近辺にのうのうと出入りする野良どもにガンつけてやりたいし、なんなら強烈な猫パンチをお見舞いしてやりたいと常日頃から思っているからだ。残念ながら、あたしは家に人がいない時は部屋から出して貰えないという、悲しい身分ではあるのだが。
で、そんなあたしには、一緒にひきとられてきた妹がいる。名前は大福。――メスなのに、あたしの名前と合わせて大福なんて名前にされてしまったことに関しては同情する。真っ白でもちもちしてるせいで、いちご大福だ!と安易に飼い主は考えてしまったんだろうけど。
そんなあたしと大福には、ある大きな問題があった。それは。
「はあああああああああああああああああ!?もっぺん言ってみろやこのクソ大福!!」
「えええ、何度だって言ってあげるわよこのクソいちご!人が遊んでる時に、玩具を横から取ってくんじゃないわよガキか!もう二歳でしょーが!!」
「そもそもお前が遊んでたボールはあたしのだっつの!それを勝手に持ち出してコロコロしてたのはお前じゃねーか!!」
「あんたのって誰が決めたのよ、そう思うなら名前書いておきなさいよ!!」
「猫の手でペンが持てるかばっかやろー!!」
とまあ、こんな具合。
あたしと妹の大福はそれはもう死ぬほど仲が悪かったのである。家の中で顔を合わせるたびにバトルが勃発する状態。玩具の取り合いだとか、ごはんの取り合いだとか、飼い主の膝の上の取り合いだとかもうそれは日常茶飯事である。
「ああ、もう、やめてくれよお」
おっとりした長男がちょっと泣きそうな顔になるのもいつもの話。きっと彼にはあたし達の喧嘩なんて、お互いに“うにゃああああああああああああああああああああ!!”と叫びまくって猫パンチしまくってるようにしか見えないのだろうけれど、それでもお互いが犬猿の仲であるのは見て取れるのだろう。
申し訳ない。わかっていても、やめるのは難しかった。赤ちゃんの時からどうしてもこいつだけは気に食わなかったのだ。他の兄弟姉妹とは、もう少し仲良くできたというのに。
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