1.私が幸せになるべき理由

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「ただいまぁ」  帰宅すると母が「あら早かったのね」と出迎える。 「うん、何か彼が具合悪くなっちゃって」  母が淹れてくれたお茶を飲みながら私は体調を気遣うメッセージをサイト経由で送信した。それから母と式の話などをしているとスマホがブルルと震える。サイトからのメッセージ通知だ。先程の返信だろうと思い相談所のサイトを開く。 「え、嘘でしょ?」  そこには斉藤隆氏とのカップリングは不成立だったと書かれていた。こういう場合理由が添えられることもあるが今回は特に理由も書いていない。私は呆然と画面を見つめる。 「加奈ちゃん? どうかした?」  怪訝そうにこちらを見る母にスマホの画面を見せた。 「あーあ、意味わかんない。今日は式の話とかもしたのにさぁ」  母は少し残念そうにしながらも「まぁ縁がなかったのよ」と私を慰める。本当は母も私と同じぐらいがっかりしているだろうに。 「何か納得いかないなぁ」  どうにも理由がわからない。いきなり手を握ったのがまずかったのだろうか。まさか、そのぐらいで? 考えているうちに少し腹が立ってきた。 「もういいや。忘れよう! もしかして相談所のサクラだったのかも。条件良すぎるとは思ったんだよなぁ」  私は母が淹れ直してくれた熱いお茶を啜る。 「そうそう。次また頑張ればいいじゃない」 「まぁね。あーあ、お姉ちゃんまた失敗しちゃったよ」  写真の中の妹に向かって愚痴る。 ――お姉ちゃん、がんばって。  美咲の声が聞こえたような気がした。そうだ、また頑張ればいいじゃない。 「よし、次こそきっと大丈夫」  私はテーブルの上のスマホを手に取り再び相談所のサイトを開いた。
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