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「ヒマっすね、店長」 「そうだな」  俺がバイトに入って二年になるが、その間何度このやり取りを繰り返しただろうか。開店してから三時間経つというのに、未だに今日のお客さんはゼロなのだ。  リユースメディアショップ、五月雨堂(さみだれどう)の平日の昼間は、大体これがデフォルト。そもそも映像コンテンツはネット配信が当たり前の今時、わざわざ円盤(メディア)を買うような人は少なくなっている。それでも、非常事態宣言が出ていた頃はそこそこにぎわっていた。といってもメインの客はやはりネットに疎い中高年なのだが。  一般客から買い取ることもあるが、ウチの主力商品はレンタルアップDVDだ。よっぽどの名作じゃない限り、映画のDVDがレンタルショップの店頭に並ぶ期間は限られている。その期間が終わって店頭から取り除かれたのが、レンタルアップDVD。うちの店ではそれらをタダ同然で引き取って売っているわけだ。もちろん盤面を研磨して傷を消したり、レンタル用のケースから通常のDVD用パッケージに入れ替えたり、といったメンテナンスをかけてはいるが。
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