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「つまり、これは葵ちゃんが大人になった時の予想モデルなわけだ」
再び会社に戻った凪と京次郎は、先ほどのアンドロイドの前にいた。
確かに先ほどあった葵の面影がある。大人になったらこんな感じになるかもしれない。
「それで……」
大体予想はついていたが、凪は先を促した。
「葵ちゃんは大人になってみたいんだよ。多分、なれないからね。レンタル期間は一日。病気のこともあるから、それが限界。それでも、危険が伴う。チャンスは一回。だから、絶対成功させてあげたい」
「……一日」
凪はアンドロイドを見上げた。
たった一日の為に、これを造ったのか。精巧なアンドロイドはもちろん高い。葵モデルを造ったのなら、尚更だ。実際の人物を似せて作れば、使いまわしは出来ない。
病室にいた葵の母親を思い出した。失礼かもしれないが、裕福には見えなかった。
凪の目線の意味に気が付いたのか、京次郎は付け加えた。
「手術の為に貯めていたものを、費用に当てたそうだよ」
京次郎はそっとアンドロイドを撫ぜていた。その横顔からは何を考えているのか分からない。葵のことを憐れに思っているのか、自分の事業の初運転に心躍らせているのか。
「分かった」
凪は口を開いた。京次郎がどんな人間だろうと、凪は葵との約束を守ろうと思った。
「それで、俺は何をすればいい?」
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