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1話
「いーお、起きてー」
「ん……」
「いお、起きないと遅刻するよ?」
「あと5分だけ……」
「それ、さっきも言ってたじゃん!」
「……」
私・石原唯香(いしはらゆいか)は、幼馴染みである「いお」こと、東山伊織を起こすのに悪戦苦闘中。
朝が弱いいおを起こすのは私の役目で、それは小学校の頃から現在の高2まで変わってないんだけど……。
いつも結局「あと5分だけ」とか「もう少しだけ」を許しちゃって、なんだかんだいおが満足するまで待ってる状況なんだ。
でも、今日こそは!
「じゃあ、もういいよ。私先に行くから、ゆっくり寝てな」
少しだけ強気に出て、いおの部屋から出ていこうとベッドから離れようとすると、パシッと手首を掴まれた。
「どこ行こーとしてんの?」
私は完全に戸惑って、あたふたしながら答えた。
「え、ええっと……」
「先に行くとかなしだから」
「ご、ごめん」
って、なんで私が謝ってるの!?
そう言おうとすると、いおが服を脱ぎ出した。
「ちょっ……!まだ私いる!」
「知ってるよ」
だからなんだとも言いたげな顔で私を眺めるいおに私はもうなにも言えなくなっていた。
「とりあえず、準備しててね。私はご飯準備してくるから」
私はそう言い残していおの部屋を後にした。
実は私といおはひとり暮らし。
マンションのお隣さん同士なんだけど、朝はこうやっていおを起こすためいおの部屋に来て、そのまま一緒に朝ごはんを食べて一緒に登校。そんな生活をもうかれこれ2年続けてる。
ちなみに今日のメニューは、ご飯とみそ汁、卵焼きにサラダという簡単メニュー。
「おはよ」
いおが自分の部屋から出てきて、私の目の前に座る。
「いただきます」
それから、他愛もない話をしながらのんびりと食べてふと時計を見ると、始業まであと20分しかない!
「い、いお!やばいよー!もうこんな時間!」
私は残りのご飯を急いで食べて片付ける。
本当は洗っていきたいんだけど、今日はそんな時間はない。
いおは、もうカバンを担いで行く準備はバッチリ。
「行ってきます!」
自分の部屋も鍵をかけて、急いで学校へ向かう。
このマンションは、学校まで徒歩30分のところにある。つまり、めちゃくちゃ急がなければ遅刻となるのだ。
私、こう見えて体力には自信がある。なんてったって小学校の頃からバスケ部で、本来なら高校でも続ける予定だった。でも、この高校にはバスケ部はないらしく、たまに体を動かしている。
いおはずっとサッカー一筋で、今も続けている。
「ゆい、もっと急がないと間に合わないよ」
いおはなんとも余裕そうだ。
「やばい……体が……動かない……」
中学の頃は確実にもっと動けてたはずなのに、いつの間にか体力が落ちてたらしい。
「まあ、もう大丈夫じゃない?」
「な、なんで?」
「もう学校」
いおの言葉通り、あと数10mで学校に着く。
最後の力を振り絞って走り、急いで教室である2年4組へ。ちなみにいおと私は同じクラス。
ガラガラ
「ハアハア……ま、間に合った、?」
なんとなんと!まだホームルームは始まっていなくて、ガヤガヤとしていた。
「いお!私たちすごくない!?」
隣にいるいおに尋ねる。
「まあ、余裕で間に合うのは分かってた」
「え、でも急げーとか言ってなかった?」
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