ほんとうの。

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 朝、晴れた空と光る槍のような朝日を全身に受け、胸いっぱいに澄んだ冷たい空気を吸うと、今日一日がとてもいい日になると思う。  信号待ちの間軽く目を閉じてたら、誰かに見られているような気がして目を開けた。  交差点の信号機のもと、少し離れた場所から同級生のカツキがこちらを見ている。  ドキッとした。  カツキは男子バスケ部、私は女子バスケ部で、時々コートが隣になる。首すじから肩のラインとか、細長いごつごつした指がカッコいいコだ。  もう一回見返すと、他のバスケ部の男の子達と交差点を渡っていくのが見えた。制服の一団の中、どうしたって彼だけが目に付く。身体中の細胞がいきなり活性化したように、見るもの全てがはっきり光って見える。  「男子バスケ部、朝から吊るんでんだ。仲良しだね」  「ほんと、ずっと一緒で飽きないのかな」  スマホをいじりながら、同じ女子バスケのアキが興味なさそうにつぶやく。校則に違反しない程度の艶やかな暗い栗色の髪が、肩のあたりで揺れていた。運動部のくせして日焼けには敏感で、日焼け止めを何層にも塗り、首元や手、しまいには髪の毛まで日焼け防止をしているという女子力の高さだ。    「ルイ、今日の授業の課題の準備した?」  「うん。一応、軽く調べたけど」  「大丈夫? 多分、今日でまとめまでさせると思うよ。書き起こししていた方がいいかも」  アキは私より少し背が低い。  つぶらなという表現がぴったりの、大きな黒目、長いまつげの持ち主。切れ長奥二重の私とは大違いだ。それに、よく気が付く。  「お嫁にするなら、アキだなあ」    「何じゃそれ」  信号を渡りながら、今日の課題と、放課後の部活の予定とか、いろんなことを話す。アキは髪を結んでいないから、風が吹くと、髪が揺れて顔にかかる。口元にひっかかっていたので、とってあげた。口元に指が当たった。  ふと顔を上げると、先を行く制服の群れから、またカツキがこちらを見ていた。  何気に見た訳ではなく、確実にこっちを見ている。アキは気付いているのかそうじゃないのか、昨日の音楽番組に出てた推しの歌い手について、楽しそうに話している。    「ねえ、ルイ、聞いてる?」  いぶかし気に見上げるアキに、あたしは優しく笑った。アキは可愛い。それに、とてもやさしい子だ。  もう一度見上げたら、カツキはもう制服の群れに飲み込まれて見えなくなってた。      
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