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まもなく夜の11時を回ろうとしている。ボクは刃物を手にしたままかれこれ30分以上動けずにいた。心臓が口から飛び出てくるんじゃないかと思うほどドキドキしている。震える手は汗でねっとりしていた。
「オイ、早くしろ!」
しびれを切らした “T” が言った。
「そうよ。あんたが殺れば終わりなんだから。」
続いて “H” がため息混じりに言った。
「こいつはビビりだから無理無理。あはははは。」
“A” がいつものようにバカにしながら笑う。
「う、うるさい!だまれ!だまれ!お、オレだって殺るときはやるんだ!」 ドキドキしてるのを悟られないように大声で言い返す。
「バカ!デカイ声出すんじゃねぇよ!」
“T” が鋭い目付きに変わった。
「じゃあ早くヤレよ!」
“A” が面倒くさそうにアクビしながら言った。
“T” と “H” と “A”
3人の視線が早く刺せと急かしてくる。その視線の先には男が鎮座していた。
くそぅ!こうなったらヤケクソだ。
ドキドキドキ……
「ええぃ。これでトドメだぁ!」
ドキドキドキドキ……
ボクは男に刃物を突き刺した!
ドキドキドキドキドキドキドキ!
『ドッカーーーン!!』
3人が叫ぶと同時に男がぶっ飛んだ。
「きゃあああ!」
ボクは思わず隣にいた “H” に抱きついた───
「きゃああ、だって。こいつはやっぱりビビりだな。あははは。」
“A(兄)” がまたバカにするように言った。
「お兄ちゃん、いい加減にしなさい!」
“H(母)” が兄を叱る。心の中でざまあみろと舌を出していると
「オイ二人とも、明日学校だろう!早く片付けて寝なさい!!」
“T(父)” の雷が落ちた。
兄と二人で大急ぎで片付ける。さっきぶっ飛んで床に転がった『黒ひげの男』を樽に戻し箱へと入れた。
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