3.

5/9
前へ
/27ページ
次へ
 淑子さんが、玄関ホールの真ん中を走り抜けて、式場の外に出た。 「うそっ!本当に外に行っちゃうのっ?!」  孝明さんから離れて、淑子さんを追うためにダッシュした小竹が、押し殺した悲鳴を上げる。  必死で淑子さんを追いかけていた美加子だが、小竹に抜かれてしまっていた。 「ド、ドレス…。ドレスが…」  小竹は狂ったように小声で呟き続けている。  そうだ、ドレスだ。式場のスタッフとしては、ドレスを破損から救わなければいけない。  しかし、あんなに長くて邪魔になるウエディングドレスを着たまま、淑子さんはどこに行こうとしているのだろうと、美加子が思った時だった。  淑子さんが、路上に立っていた男性の胸に、通行人からの視線をものともせずに飛び込んだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加