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「あらま、急がないと遅刻しちゃうじゃない」
うちのおねえちゃんは忘れんぼさんだねえと思いながら、美加子は呆れた声をあげた。
美加子のほうは、都内にある結婚式場で、月に12~14日くらいのペースで働いている。
主な仕事は式場の案内係だが、披露宴での料理のサーブや、チャペル式の際のウエディングマーチのピアノ演奏をすることもできるので(ここの式場はオルガンではなくピアノを使っている)、職場で重宝がられている。
平日は休みのことが多い美加子は、自分は休みで良かったと、慌てる姉を傍観していた。
しかし、その目が突然、深刻な色を帯びた。
重大な事実を思い出したのである。
「私もだ…。私も今日仕事だ…」
「えっ?」
十和子が怪訝そうな顔で振り返る。
「今日、有休を取る人がいるから、代わりに出るんだった…。どうしよう、すっかり忘れてた…」
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