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 その日の夕方、十和子と美加子は最寄り駅の改札を出たところで、お互いの姿に気が付いた。 「美加子ちゃん。今、帰り?」 「おねえちゃん。今朝は間に合った?」  還暦に近い二人の姉妹は、一緒にスーパーに寄り、自宅であるアルファ・ビルヂングまでの道のりを、買い物バッグを持ったまま、ぶらぶらと歩いた。  6月の夕方は、なかなか暮れなかった。空が夕焼けのピンク色にほんのりと染まっている。  アルファ・ビルヂングの近くまで来た時、美加子が空を見ながら言った。 「コウモリが飛んでる」  十和子が上のほうを見ると、美加子の言う通り、一羽のコウモリがひらひらと空を舞っていた。 「本当だ。コウモリね」  あのコウモリは仲間を探しているのだろうか。十和子がそんなことを考えていると、唐突に美加子が言った。 「私、あのコウモリを捕まえたい」 「捕まえてどうするの」  子供の頃だってこんなことは言い出さなかったと、呆れながら十和子が尋ねると、美加子はコウモリを睨んだまま答えた。
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